一般貨物自動車運送事業経営許可申請の全体像と期間
◆一般貨物自動車運送事業を開始するまでにかかる期間は?
標準的なケースで、全体で9カ月ほどになります。以下の4つの期間に分けられます。
・初回打ち合わせから調査に要する期間・・・約1ヶ月 ・申請書類等作成にかかる期間・・・約1ヶ月 ・許可取得までにかかる期間・・・約4~5ヶ月 ・許可後、運輸開始までにかかる期間・・・約1ヶ月 |
初回打ち合わせ、調査から運輸開始できるまで8~9カ月ほどかかることになります。ただし、この期間はあくまで標準的な実務上の目安です。
実際には、調査した結果、許可要件を備えていない事柄が判明した場合、それらを満たすための準備期間もかなり必要となるケースがあります。
たとえば、営業所として利用したかった物件が、貨物自動車運送事業の営業所として利用不可能であったり、車庫の要件を満たさなかったりした場合などです。
このほかにも、役員法令試験で再試験になったり、厄介な補正事項でつまずいたりすると、これ以上の期間を要します。
このように、許可に要する期間及び事業開始までの期間が、他の許認可に比べ非常に長くなる傾向にあるのが、一般貨物自動車運送事業経営許可申請の特徴です。
次に全体の流れをもう少し細かくみていきましょう。
1.初回打ち合わせ |
許可要件を満たすか否かの確認がメインとなります。許可の可能性があれば、調査に移行します。物件等の要件もさることながら、一定の自己資金の準備が可能かどうかも確認します。
2.予算書の概算、現地調査、役所の関係各課での許可要件の確認 |
営業所や車庫などについての許可要件について現場で直接確認し、同時に役所の関係部署に物件等についても事前確認をします。また、必要とされる自己資金がいくらになるのか?を把握するため、予算を具体的に組み立てます。要は、許可の見込みがあるかどうか?をこの段階で見極めますので、ここでの事前調査は、非常に重要です。後の6の段階で不備が発覚すると、数か月後に申請取下げとなってしまいます。慎重かつ正確な調査が求められているところです。
3.1回目の残高証明書他必要書類準備、申請書類作成 |
ここでは自己資金を証明するため1回目の残高証明書も発行してもらいます。その他1.2.で集めた資料等をもとに書類を作成していきます。
4.許可申請 |
運輸支局での窓口審査は、必要書類があるかどうか?のみで原則終了します。運輸局が許可要件を満たすかどうか?を深く精査していくのは、役員法令試験合格後の6の段階以後です。
5.役員法令試験(許可申請後の奇数月に開催) |
役員法令試験については、担当常勤役員1名のみの受験。複数名の役員の受験は不可です。ここは十分な対策と準備が必要となります。万一、落ちてしまうと再試験となりますが、その後の再々試験は認められません。要は、2回まで受験可です。ここは是非、一発で合格しておきたいところですね。
6.役員法令試験合格後の補正事項への対応(実質審査の開始) |
役員法令試験後に運輸局による実質的な審査がはじまります。ここで役員が欠格事由に該当していたり、あるいは、営業所の要件が法令に満たしていないことなどが発覚すれば、申請を取り下げざるをえなくなります。前の2の段階での調査の精度が、この段階で問われますので、事前調査の精度の高さは必須です。
7.2回目の残高証明書の取り寄せ |
3の段階で取得した自己資金を証明する残高証明書がこの時点でも提出が求められます。万一、資金不足で予算をまかなえない場合は、申請の取下げとなりえますので、堅実、確実な資金計画が求められます。
8.補正完了後、許可証の発行 |
埼玉県の場合は、許可証の交付式を行います。ただし、他の都道府県では、許可証の交付のみで行わないところもあり、対応はそれぞれ異なるようです。ここでホッとするのも束の間で、許可後以降にも様々な手続きが発生していきます。
9.ドライバーの雇用、車両等の準備 |
この段階までにドライバーの雇用と社会保険等の完備を済ませておきたいところです。もっと早い段階で決まっていれば、望ましいです。また、ドライバーの運転記録証明の取得や健康診断、適性診断等の事前準備も忘れずにしておきましょう。
10.運行管理者・整備管理者選任等届出 |
運行管理者や整備管理者といった資格者を選任し、届出を行う必要があるのも、許可後すぐのこの時期。それまでに有資格者を確保しておかなければなりません。なお、運行管理者は1名では実務上は対応できないため、複数名の運行管理者もしくは補助者の選任も実務上必須です(ただし、届出は不要)。整備管理者も補助者含め複数名いるのが望ましいです。
11.運輸開始前確認の提出、車両について連絡書発行 |
運行管理者の選任等運輸開始の準備が整った段階で行います。合わせて車両については連絡書を発行してもらい、緑ナンバーに切り替えるための準備をしていきます。
14.連絡書にもとづき緑ナンバーの取得 |
営業所を管轄する陸運支局にて緑ナンバーの取得。なお、連絡書は、発行後1ヶ月内という期限付きのため要注意です。緑ナンバー取得後は、任意保険への加入手続きを完了させます。
15.点呼記録簿等の帳票類の準備、ドライバーの適性診断等の受診 |
業務に必要な帳票類を完備しておく。運輸開始届出後の初回巡回指導でのチェック項目も合わせて確認。同時にドライバーの運転記録証明、適性診断、健康診断もこの段階で終えておき、選任を完了しておきます。ドライバーに不適の場合には、選任は不可となります。ドライバーを雇用することとドライバーに選任することは、異なる点を気に留めておいてください。運転者台帳にその点を記載する欄もあります。
16.運輸開始届、料金表、約款の届出 |
帳票類等の準備が整い、運輸開始にいたったら運輸開始届を提出します。合わせて料金表、約款も提出します。運輸開始届出後、3~6ヶ月以内に巡回指導が来る予定。
◆調査、確認事項の重要性
繰り返しになりますが、上記2番目での調査で許可要件の確認を怠ると、当然のことながら許可が下りません。
ここに専門家に依頼する意味が出てきますし、その責任の大きさも生じてくるところでもあります。
また、これらは法令にのっとって正確に行う必要があるため、精緻な法令知識や申請の実務経験の蓄積が不可欠です。
ここを外してしまうとすべてが水の泡となり、多大な損害も発生してしまいます。
上記2番目での調査では、許可申請の重要な要件の把握が求められます。