新規許可を取得したい事業者様へ
新規に取得したいとお考えの方は、ややもすると許可の取得に囚われがちとなります。しかし、許可制度の根本をまず把握していただくことが、今後の健全な運営のカギを握ります。
なぜ、一般貨物自動車運送事業には、許可が必要なのか?
許可とは、そもそも国民に禁止されている行為の解除を意味します。つまり、誰もが自由にその事業を営むことができないように規制されている業種と言えます。
一般貨物自動車運送事業は、多くの人々が利用する公道を活用しながら事業を行います。同時に人々の暮らしを支える物流の根幹をなす事業でもあります。
もしも、その公道で大事故が起きてしまったら?
あるいは、大災害等で物流機能がマヒしてしまったら?
人命のみならず、社会的にも、経済的にも計り知れない損失を招きます。
ですので、単に許可が取れて、事業が適法に開始できればよいというわけではなく、その公的ともいえる事業を安定的、継続的に果たしていく使命と責務が、許可事業者様に課されていきます。
許可の審査にあたっては、提出する書類のうちの事業計画書、資金要件と予算といった事業を継続するにあたり必要な項目が重視されています。
そして、許可取得後一定の事業計画の変更については、認可が求められる重要な項目もあります。
このような規制がある理由は、まさに事業の公的性質に他なりません。
許可要件及び許可取得後の規制にはどのようなものがあり、どのようにクリアしていくのか?
規制の理由とその内容をまず把握することが、一般貨物自動車運送事業を適正に継続的に展開する基盤となります。
単に許可取得のみならず、その後の運営までを見据えていただくことが、事業継続の上で重要です。
そして、その一助を行政書士が担います。許可を取得するのみならず、取得後の道筋を共に歩んでいくことが、行政書士の役割だと私は考えています。
いずれにしても忘れてはならないのは、一般貨物自動車運送事業は、営利活動であると同時に社会的責任の重い事業でもあるという点です。
この根幹を深く認識していたただくことが、一般貨物自動車運送事業の経営許可を取得し、事業を継続的に運営していくにあたり非常に重要な点となります。
次に許可申請の特徴について述べていきます。許認可に関わる行政手続きは、それぞれの分野ごとに特徴があります。
その特徴をまず捉えておくことが、許可取得手続きをスムーズに進めていく上で大切になります。
一般貨物自動車運送事業にも特徴的なことが、いくつかあります。その点について、以下述べていきます。
特徴は、次の3点に絞られます。
2.実務で必要かつ重要な知識を習得していただくため、役員法令試験が課せられる
3.定期的な巡回指導があり、許可取得後にも継続的で適正な運営が求められる
ひとことで言えば、一般貨物自動車運送事業経営許可申請の場合、他の許認可を要する業種と比べると許可のハードルが非常に高いのが特徴です。
資金面、営業所や車庫、トラックの台数などの施設整備の面、運行管理者や運転者といった資格者の確保といった面で、許可要件をクリアするのに時間を要します。
許可を取得し、事業を開始するまで時間を申請から数カ月間(実際には半年近くも)要します。そして、申請にいたるまでの準備にも数ヶ月時間を要するケースもよくあります。
このような期間を踏まえて事業計画、資金計画を練っていかなければなりません。
また、担当常勤役員には、法令試験が課せられ、それをクリアできなければ許可が下りません。この点についても、不安をお持ちの経営者はたくさんおられますし、対策が必要なところです。
また、許可を取得する際のみならず、その後の巡回指導時での対応といった面でも、法令に沿った運営か否か?が、厳しくチェックされます。
また、運行管理の不手際から大きな事故を起こしてしまえば、場合によっては監査のリスクも背負います。
このように、許可を取得する時のみならず、許可を取った後の運営面でも様々な壁に出くわしていきます。その壁をクリアするには、どうすればよいのか?
そのクリアする有効な具体的方法を提案していくのが、行政書士の役割となります。
単に許可を取得しておしまいというわけにはいかないのが、この分野の特徴と言えます。
数年前、とある縁から貨物運送屋さんと仕事をするようになりました。はじめて許可を取得した時は、それはもうドキドキの連続でした。
同時に業務を行いながら心の中でこうも思いました。(付け焼刃で対応できる仕事ではないな・・・)と。
今も少しずつですが、運送事業関連の仕事をいくつかいただきます。そして、こうした有難い縁をいただき、業務をしていく中で気づいたことがあります。
それは、特に貨物自動車運送事業という分野では、法務アドバイザーとしての高い専門性と深い見識が行政書士に求められるという点です。
ところで、行政書士の業務範囲は、非常に広いものがあります。代表的なものでいえば、建設業許可申請や産業廃棄物収集運搬業許可申請、風俗営業や在留資格関係の許可申請もあります。
また、内容証明などの民事法務もあれば、離婚や相続手続きを主に行っている先生もいらっしゃいます。
業務範囲が広いということは、一人の行政書士でできる範囲が限られてくるという面もあります。
特に一般貨物自動車運送事業については、許認可のみならず、その後の運営にいたっても、高い専門的知識と深い実践的経験が問われる分野です。
許可を取るだけならば、どうにかこうにか専門にしていない行政書士でも取得はできます。
しかし、その後の事業計画等にともなう変更、巡回指導時での対応といった面で、やはり専門的にやっていなければ厳しいというのが、自身の見解です。
ですので、行政書士の選び方は、下記のどちらかになります。
①できる限り安く手続きを済ませ、できる限り自社内でその後の運営を完結させていきたいのか?
②信用ある専門家と共に事業に関わり合いながら、適正な運営をし、よりよい会社を創っていくためのアドバイザーとしての役割を期待するのか?
どちらがよくて、どちらが悪いか?という話ではなく、どちらを選んだほうが自社にとって最適なのか?という視点で考えていただくことが、大切と考えます。
ちなみに私は②のタイプの仕事をしていきます。ですので、②のお考えの方には、良いかもしれません。
もちろん、会社によって、それぞれのお考えはあるかと思います。
そこで、どのような行政書士を選べばよいのか?を決めていただくことが、その会社にとって最適な道に至るのではと考えております。
最後に。
事業を運営していくにあたり、もちろん、売上と利益は非常に大切です。ですが、その売上と利益は、その事業体の信用度に支えられている面が大いにあります。
その信用度を共につくりあげていくことが、一般貨物自動車運送事業経営許可申請を契機として、この分野での行政書士には求められていると私は考えております。
仕事を通して依頼主と行政書士という関係から、もう一歩深いつながりをもてたら、うれしい限りです。