自己資金の要件

自己資金5つのポイント

1.従来は800万円超でも申請可能だったが、現在はその2.4倍くらいの自己資金が求められる

2.調査段階での精度の高い予算書作成が求められる

3.自己資金を証明する預金残高証明書は、申請時とその数か月後の処分日直前の合計2回の提出が求められる

4.複数の金融機関から預金残高証明を取得する場合には、証明日に注意

5.自己資金不足の場合、流動資産(売掛金)をどのように活用するか?が、カギ

 

自己資金のポイントについて個々に詳しく記載しています。参考にご覧ください。

★必要な自己資金はどのように調べるのか?

一般貨物自動車運送事業経営許可申請において最も重要なのは、自己資金(保有する預貯金額)です。

この自己資金が用意できなければ、申請ができません。

ですから、まず申請に入る前の調査段階で必要な自己資金を調べる必要があります。

どのように調べるのでしょうか?

申請前、調査段階での予算書作成によります。そしてこの予算書は、申請時に根拠資料と共に添付することになります。

原則として保有している預貯金で算出した予算上の経費を賄わなければなりません。

特に令和1年11月からの改正法施行により、この要件はとても厳しくなりました。

したがって調査段階で精度の高い予算書作成が求められます。

★以前よりも厳しくなった要件

先の改正法施行により、従来の約2.4倍以上の自己資金が必要とされます。

具体的には改正法施行前は、最低限800万円~900万円超でも申請ができました。

ところが、現行法では、2000万円超の自己資金が要求されることもありえます。

もちろん、事業体それぞれの置かれた状況によってこの金額の多寡は決まりますが、目安としてこのくらいの数字を把握しておいていただきたいところです。

預貯金を2000万円準備するというのは、中小、零細企業にとっては至難の業です。

しかし、制度上求められてしまっているので、何としてでもかき集めなければ申請ができません。

厳しいですが、この点はまず認識しておいていただきたいところです。

★残高証明書が求められるタイミングは2回

自己資金は、金融機関の発行する預金残高証明書の提出によって証明しなければなりません。

その提出時期は、許可申請時の他、申請後4~5か月後となる役員法令試験合格後の補正時です。

つまり、申請時と許可処分日前の合計2回です。

なお、申請日以降許可取得日までの間、常時保有されていなければならないという取り決めになっています。

★自己資金額の考え方

ここで注意しておきたいのは、最終的に認められる自己資金は、どのように決められるのか?という点です

  1回目(申請時) 2回目(処分時) 認められる金額
A社保有預金額 2000万円 2500万円 2000万円
B社保有預金額 2500万円 1500万円 1500万円

注意すべきは、上記の表のとおりどちらか少ないほうの金額しか認められません。

ですから、1回目の時に提出する自己資金がいくらになるのか?が重要となります。

同時にその自己資金を極力減らさずにキープしていく努力が求められるのです。

★複数の金融機関にまたがる場合の注意点

A銀行とB銀行ともに預金を保有している場合、預金残高証明書の証明日(発行日ではありません)にも注意を要します。

各金融機関での証明日を同日にしなければ、片方の預金残高証明しか認められないことになります。

なぜでしょう?

証明日を別々にすれば、預金をA銀行からB銀行に移し替え、自己資金の水増しができてしまうと考えられるからです。

なお、発行日については、証明日さえ同じであれば別々でも支障はありません。

複数の金融機関に自己資金がある場合、この点には注意する必要があります。

★どうしても自己資金が集まらない場合は?

どうしても必要な自己資金が集まらない場合は、どうすればいいのでしょうか?

このような場合、すでに稼働している事業体であれば、みなし貸借対照表を添付することが認められます。

みなし貸借対照表とは、預貯金残高証明日と同日の貸借対照表を指します。預金残高証明日と同日ですから、こちらも2回の提出が求められます。

ここに記載されている流動資産のうちの売掛金を自己資金額に加算することができるのです。

この制度を活用したい場合、毎月いくらの売掛金が発生するのか?が重要になります。

  1回目(申請時) 2回目(処分日前) 認められる金額
保有する預貯金額 1500万円 2500万円 1500万円
みなし貸借対照表上の売掛金 1500万円 1000万円 1000万円
合計金額 3000万円 3500万円 2500万円

上記のとおり、預貯金額と同様に売掛金についても1回目、2回目ともに少ないほうの金額のみが認められます。